端材置き場には板が積まれている。それでも今日のネスティングは新しい定尺材で組まれ、切断が終わると、また端材が一枚増える。板金・溶断加工の現場では、こうした状況は珍しくありません。
材料費を抑えるために、歩留まりの改善やネスティングソフトの見直しを検討する企業は多くあります。しかし、配置の精度を上げても、手元にある端材(残材)が使われなければ、材料費は思うように下がりません。
本記事では、端材が使われない原因を「管理」と「段取り」の視点から整理し、現場で最初に見直す項目と、改善を進める順番を解説します。
この記事で分かること
- 端材があるのに使われない4つの原因(所在・情報・判断・工程)
- 最初にそろえる端材管理の項目と、更新の責任・タイミング
- 見積から切断後の登録まで、段取りの中で端材情報をつなぐ方法
端材はあるのに、なぜ新材を使ってしまうのか
端材が使われない原因の多くは、配置の技術ではなく、端材の情報が必要なときに必要な人へ届いていないことにあります。
端材を再利用するには、ネスティングの前に「どの端材が、どこに、どのような状態であるか」が分かっている必要があります。シグマテックジャパンの営業現場で多く聞かれる相談も、ネスティングの精度そのものより、端材の所在や使用可否が分からないという内容です。
同じ問題でも、立場によって見え方は異なります。
工場長・製造責任者から見えること
材料費が下がらない。帳簿上の在庫と現場の在庫が合わない。端材の状況を特定の担当者しか把握していない。
CAD/CAM担当者から見えること
端材を確認するために現場へ行く。使えるか判断できず新材を選ぶ。ネスティング後に材料を変えて作り直す。
歩留まりは、投入した材料に対して部品として使えた割合です。歩留まりを上げる取り組みは重要ですが、発生した端材が次の仕事で使われず、最終的に破棄されてしまえば、材料費の削減にはつながりません。
関連記事:歩留まりの基本と残材利用の考え方
端材ロスを生む4つの断絶
端材ロスは、「所在」「情報」「判断」「工程」の4か所で情報が途切れることで起こります。
所在の断絶
どこにあるか分からない。確認のたびに事務所と工場を行き来する。
情報の断絶
材質・板厚・寸法が記録されていない。CAD/CAM上の情報と現物が合わない。
判断の断絶
錆・積み上げ・不定型で、使えるかどうか判断できない。
工程の断絶
見積・手配・ネスティング・切断後の登録がつながっていない。
所在の断絶:どこにあるか分からない
端材があることは分かっていても、どの置き場の、どの段にあるかが分からない状態です。工場と事務所が離れている場合や、拠点が複数ある場合は、確認のたびに現場まで移動することになります。リアルタイムに所在を確認できないため、担当者が自分で見に行くか、現場に電話で確認する運用になりがちです。
情報の断絶:材質・板厚・寸法が記録されていない
端材の材質・板厚・サイズを、CAD/CAM担当者が記憶で把握しているケースがあります。記録がなければ、担当者が不在のときや異動・退職のあとに、端材は使えなくなります。記録があっても、CAD/CAM上の材料情報と現場の実在庫が一致していないことがあります。
判断の断絶:使えるかどうか判断できない
錆が出ている、下に積まれていて取り出しにくい、形が不定型で寸法を把握しにくい。こうした端材は、使えるかどうかの判断が難しくなります。不定型の端材は、クレーンで吊りにくい、保管時に危険がある、板厚が薄いと曲がりやすいといった理由から、矩形に切りそろえて保管する現場もあります。
ここで分けて考えたいのが、「形状を記録すること」と「加工に使えると判断すること」です。形状が記録されていても、状態や取り出しやすさを確かめなければ使えるとは言えません。判断がつかない場合は確実な新材が選ばれ、端材はさらに積み上がり、最終的にスクラップになります。
工程の断絶:見積から切断後までがつながっていない
見積、材料手配、ネスティング、NC作成、切断、切断後の登録が、それぞれ別の人・別の台帳で進んでいる状態です。切断後に登録されなかった端材は、次の工程からは存在しないものとして扱われます。
反対に、端材を登録していても、実際のネスティングでは使われていないケースもあります。すでに使われた端材が台帳に残っていたり、複数の担当者が同じ端材を別の仕事に使う予定を立てたりすることもあります。
規模が大きくなるほど断絶は起きやすい
小規模な工場では、一人がCAD/CAM・機械・材料をまとめて把握しているため、この問題は表面化しにくい傾向があります。一方、中規模の工場で担当が分かれ、拠点や設備が増えるほど、情報の受け渡しが増え、断絶が起きやすくなります。
最初にそろえる端材管理の項目と更新ルール
端材を残すこと自体が目的になると、保管スペースと管理の手間が増えるだけです。目指すのは、使える端材を次の生産で再利用できる状態にすることです。そのために、システムを検討する前に「何を記録し、誰がいつ更新するか」を決めることが出発点になります。
現状を書き出す
まず一つの置き場を選び、次の4点を現状のまま書き出します。
- 端材が発生する工程と機械
- 保管場所(置き場・棚・段)
- 管理している人
- 再利用するかどうかを誰が、何を見て判断しているか
管理項目をそろえる
端材1枚ごとに、最低限次の項目を記録します。
- 材質
- 板厚
- 寸法・形状(不定型の場合は、寸法入りの形状図など形が分かる形で)
- 保管場所
- 発生日
- 状態(錆・傷・変形など)
- 使用可否(使用可/確認待ち/使用不可)
- 使用予定(どの仕事で使う予定か)
項目が担当者ごとにばらばらだと、記録があっても検索や比較ができません。表記ルールも合わせて決めておきます。なお、写真は状態の確認に役立ちますが、写真だけで加工に使える範囲を決めないようにします。
更新の責任とタイミングを決める
誰が登録するか
切断した人か、CAD/CAM担当者か
いつ登録するか
切断直後か、置き場に置くときか
誰が使用予定を入れるか
端材を仕事に割り当てた時点で、ほかの担当者にも分かるようにする
誰が廃棄を判断するか
一定期間使われない端材や状態の悪い端材を、どの基準で処分するか
あわせて、端材の現物に番号やラベルを付け、記録と照合できるようにしておくと、探す時間を減らせます。項目を増やす前に、繁忙時にも続けられる入力方法かどうかを現場で確かめてください。
管理だけでは解決しない「段取り」のつながり
台帳を整えても、各工程で参照・更新されなければ端材は使われません。本記事でいう段取りは、見積、材料選定、ネスティング、NC作成など、切断に向けた準備を指します。端材の情報は、この段取りの一部として扱う必要があります。
工程ごとに、次の確認と更新を入れます。
条件に合う端材があるかを確認する。端材を使う場合は、取り出しや準備にかかる手間も見込む
使う材料を決め、ほかの仕事で使う予定と重なっていないかを確認する
選んだ端材の実際の形状と加工条件で部品を配置する。後から別の端材が見つかると、材料選びからやり直しになる
プログラムの材料条件と、実際に使う現物が一致しているかを照合する
使った材料の情報を更新し、新しく発生した端材の形状・場所・状態を登録する
ポイントは、材料を決める前の確認と、切断後の更新を一組にすることです。途切れている工程が、改善の優先箇所です。なお、取り出しの手間が大きすぎる端材を無理に使う必要はありません。納期や工数も含めて判断し、必要な仕事で無理なく再利用できる状態を目指します。
紙・Excel・記憶による管理が限界になるサイン
紙やExcelでも、関係者が同じ情報を見られて現物と一致していれば、運用は続けられます。次の項目に複数当てはまる場合は、手作業の工夫を重ねるより、情報のつなぎ方そのものを見直す段階です。
- 端材の確認のために、事務所と工場を行き来することが日常になっている
- 特定の担当者がいないと、使える端材が分からない
- 棚卸しのたびに、台帳と現物の差異が見つかる
- 切断後の登録が後回しになり、更新漏れが起きている
- 複数の担当者が、同じ端材を使う予定を立ててしまう
- 在庫表とCAD/CAMに、同じ情報を何度も入力している
- 不定型の端材を正確に記録できていない
当てはまる項目があれば、まず一定期間、確認のための移動や問い合わせの回数、情報の不一致が起きた場面を記録してみてください。運用ルールで直せる部分と、仕組みが必要な部分を分けて判断できます。
SigmaNESTで支援できる範囲
SigmaNEST(シグマネスト)は、板金・溶断加工向けのCAD/CAM・自動ネスティングソフトウェアです。ここまで挙げた断絶のうち、材料と工数、情報管理にかかわる部分を支援します。
材料
端材を「使える在庫」として扱う
工数
探す・確かめる・作り直す負担を減らす
情報管理
前後の工程とつなぐ
材料:端材を「使える在庫」として扱う
新材と端材の情報をデータベースで管理し、実際の形状の端材にネスティングできます。端材を切り出す加工経路を作成すると、その端材が材料として登録されるため、現場での採寸の手間を減らせます。登録済みの端材を含めて、部品に適した材料を選んでネスティングするベストシート機能もあり、材料の有効活用を支援します。なお、ご利用のパッケージにより、標準で使える機能が異なります。
関連記事:在庫と端材管理機能
関連記事:端材を優先して自動ネスティングする設定の例
工数:探す・確かめる・作り直す負担を減らす
図面の取り込みからネスティング、NC出力までの作業を一つの流れで扱えます。お客様の運用に合わせて設定することで、ネスティングからNC作成までの自動化を支援し、特定の担当者に集中していた判断や作業を分散しやすくなります。端材を探す移動や確認、ネスティングのやり直し、担当者交代時の引き継ぎの負担を減らすことが目的です。
情報管理:前後の工程とつなぐ
生産管理システムなどの上位システムと連携し、受注・材料・加工の情報をつなぐ運用もあります。連携の内容は各社の運用に合わせて確認・構築します。効果は、加工内容・設備構成・材料・運用条件によって異なります。
導入前に確認すること
システムの導入は、次の順番で進めると現場に定着しやすくなります。
端材の発生・保管・登録・判断の流れと、途切れている工程を確認する
対象とする工程、機械、材料、置き場を決める
端材一覧、代表的な図面、在庫表を使い、端材の活用に加えて、探す時間・再入力・登録の手間・加工準備の待ち時間の変化を確かめる
登録・更新・判断のルールを、担当者全員で共有する
一つの置き場や対象材料から始め、切断後の更新まで続けられることを確かめてから広げる
事例:運用の合意が効果を左右した熔断メーカー
ある熔断メーカーでは、SigmaNESTを導入していたものの、従来の手動ネスティングの運用を続けていました。自動ネスティングを試験導入したところ、CAD/CAM担当者の工数削減と歩留まりの向上は見込めた一方、現場からは切断後の片付けの負担について不満が出ました。
そこで経営層、工場・部門のリーダー、シグマテックの担当者が集まり、材料コスト削減という目的を共有したうえで本格運用に移りました。同社の公開事例では、DXF取込からプログラム出力までの作業時間の短縮に加え、運用開始から2年時点で、2工場合計・月平均1,500万円以上の材料費削減につながったことが紹介されています。
ソフトの性能だけでなく、現場と管理部門が同じ目的で運用を決めることが、効果を出すための前提になります。
まとめ:端材を使える状態にするのは「管理」と「段取り」
- 端材が使われない原因は、所在・情報・判断・工程の4つの断絶にあることが多い
- 最初に、管理項目と、登録・使用予定・廃棄の責任とタイミングをそろえる
- 材料を決める前の確認と、切断後の更新を一組にし、各工程で同じ端材情報を参照する
- 紙・Excel・記憶での運用に限界のサインが出たら、まず回数や場面を記録して判断する
- システムは、現状確認と実データでの検証を経て、段階的に導入する
端材が使えない原因は、ネスティングだけでなく、保管方法、情報更新、工程間の連携にある場合があります。シグマテックジャパンでは、現在の管理方法と加工工程を伺ったうえで、どこから改善できるかを一緒に整理します。「何から見直せばよいか分からない」という段階でも、お気軽にご相談ください。
